カップケーキ
「いっぱいもらっとるのぉ」
声に振り返るとそこには仁王がいた。
「まぁな」
仁王の言葉に頷きながら目を机の上に向けた。
そこにあるのは。
「カップケーキか」
俺のクラスではさっきの家庭科で女子はカップケーキを作ったらしい。
それが俺の机に沢山あるのは俺のお菓子好きをみんな知ってるからで。
「綺麗にラッピングしとる」
仁王が一つ、机からカップを取って眺める。
カップケーキから目を離すと俺に向かって投げた。
それは軽く俺の手に納まる。
「が見たら怒るんやなか?」
「残念だけどは家庭科の後かたずけでいないからなー。
帰ってくるまでに食うから大丈夫だっての」
「何が大丈夫だって?」
「わぁ!」
心地のよいソプラノボイスがいきなり聞こえて俺は声を上げた。
「おぉ、。お疲れさん」
「うん、ありがと」
は仁王の呼び掛けに答えると俺に再び視線を向けた。
恋人に向けるとは思えない冷たい視線だ。
「ブン太?これはどういう事かな?」
「い、いや。これはその」
「丸井、に言い訳は通用せん」
あきらめんしゃいと仁王は俺の肩を軽く叩いた。
「もぅ、いい」
「や、やんのか」
「貰おうが貰わないがブン太のかってだもんね」
あ れ ?
は構えていた俺に背を向けて廊下を歩いていった。
「何なんだよ、あれ」
「丸井気付かんかったんか?」
俺が顔に疑問に歪めると仁王は怪しい笑みを浮かべた。
「隠しもっとったよ、カップケーキ。
ブンブンにやるつもりだったんじゃろ」
「なんで、」
渡さないんだと出そうとした声は仁王に妨げられた。
「そりゃ、好きなヤツが他のヤツから何かもらっとったら嫌じゃろ」
ただ嫉妬しとるだけなんよ、と仁王は苦笑した。
「このカップケーキと」
仁王は俺の机の上のカップケーキを一つ掴んで俺の目の前に差し出す。
「さっきが持ち去ったカップケーキと。
どっちがいいん?」
「どっちかでないといかん」
「そりゃ…、のが一番…」
「そう思うんやったら追いかけて自分が思っとる事伝えてきんしゃい」
仁王の言葉で足を駆け出した。
通り過ぎざまにおせっかいと呟くと仁王は肩をすくめた。
階段を上って上って上って。
屋上にあがるとが丁度、屋上からカップケーキを投げ捨てようとしてたところ。
ナイスタイミングと思ってこっそり駆け足でに近づくとの上げられた華奢な腕を掴み、反対側に反らす。
ギシギシいってっけど、今の俺は気にしない。
「あだだだだ!!」
その手からころん、とおっこちたカップケーキをもう片方の手で受け取るとの手を離してやる。
「何、すんのよ!」
は涙目になって俺を睨み付けた。
「んー。どんなお菓子よりが作ったのがいい。
のじゃないとダメなんだって思ったから?」
そう言うとは座りこむ。
それにつられたようにしゃがみこんでやると顔を覗きこんだ。
は真っ赤な顔をしている。
可愛いなんて言ったら殴られるだろう。
「あたし、だってブン太以外に、作りたいなんか思わないよ」
…可愛い!
「あー。マジ可愛い!」
を抱き締めるとが小さな悲鳴を上げて身をこうばらせた。
「リクエストして、いい?」
が頷く。
俺はそんなに一つ、キスを落とした。