きみが生まれてきた証にありがとう。
誕生日プレゼント
運悪く、あたしは今日掃除当番に当たってしまった。
見たいドラマがあったのにと一つため息をこぼした。
相方の姿が見えないところを見るとヤツはサボりだろう。
だだっぴろい教室の掃除を終え、箒をしまおうと掃除用具のロッカーを開けた瞬間、聴覚は先程より鋭くなる。
ぱたぱたぱた、と誰かの足音。
ガラっと扉の開く音。振り返ればそこにいたのは赤い髪。
男子テニス部員のアクロバティクプレイヤーでクラスメイトの向日岳人。
「向日、忘れ物?」
彼はあたしの言葉には答えず黙れのジェスチャーをする。
あたしが口をつぐむのを確認すると辺りを見渡す。
慌てているみたいだ。
向こうから聞こえるのは足音で向日はその音に反応する。
「、何があっても何もしゃべるなよ!」
「はぁ!?」
向日はそれだけ言うとあたしを掃除用具のロッカーに押し入れた。
狭い!
くらい!
あたしが反論の声を出そうとするが向日が入ってきてますます狭くなり、怒る気も失せてしまった。
そして、向日を焦らせていた足音はこの教室に響いた。
「向日くん、いた?」
「いない!」
「えー、今日中に渡したいのにー」
女の子の声、という事は。
向日のファンか。
足音はその内、教室から遠ざかって行った。
「…悪いな。巻き込んじまって」
「いや。別に」
いつも大変だね、と言おうとして気がついた。
「…もしかして、今日向日の誕生日?」
「まぁな」
どうりで今日渡さなければいけないわけだ。
「向日、散々な誕生日だね」
「うっせ」
「でも誕生日おめでと」
「お、おぅ」
「誕生日プレゼントはないから」
えーと、どうしようと悩んでいると向日は苦笑いでロッカーの扉を開けた。
「ほら」と手を差し伸べてくる向日がかっこよく見えてなんだか恥ずかしかった。
差し伸べられた手を握り、立てろうと足に力を入れた途端、すごい力で引っ張られた。
そして唇に暖かい感覚。
「誕生日プレゼントもらいっ!」
向日はにやりと怪しい笑いを浮かべて部活に戻って行った。
その背中になんだか悔しさが込み上げてきてあたしは唇を押さえて一言、バカ、と呟いた。