「、ちょっと付き合えよ」
「は?」
そう言われたのはほんの十分程前のこと。
授業の始まりを告げるチャイムが鳴って「あ」と小さく声を上げると隣で有川くんが笑ったのが分かった。
そんな彼に少し腹が立つが狭くて下手に動けないので何もしないでおく。
「サボってんのにチャイムの音で反応するヤツ初めて見たぜ」
本当におかしそうに笑いを堪えている声を聞いて、本当にぶん殴りたくなった。
「私、有川くんと違ってサボったことないから」
でもちょっと興味はあった、と続けて言葉を告げるとそうか、と彼はまた笑った。
このごろの有川くんは少しおかしい。
ただのクラスメイトなんだけど冬休み前から休んでいておかしいなとは思っていた。
春日さんから聞くと高熱でうなされてたとか。
学級委員として見に行こうとしたら止められるし。
それでもって、冬休みが明けたと思ったらいきなり大人っぽくなってクラスにいた。
あぁ、別に外見の話ではない。
と、いうか外見はまったく変わっていない。
中身、ようは性格が前より大人しくなったというのか。
そういえば、成長したね、と有川くんに言えば本人よりその隣にいた春日さんが少し慌てていたな。
「そういえばクラスの子が冬休み中に有川くんの成長版みたいな人、見たって言ってたよ」
「へぇ」
イトコかな、と私が言えば彼はどこかで血が繋がってるのかもな、と答えた。
はたして本当にそうだろうか。
クラスの子でなく、私自身が見たのだがあれはもうどう見ても有川くんだった気がする。
今より少し成長して成人すれば彼はああなるのだろうと考えた瞬間思った。
あれは未来の有川くんかもしれない、と。
だが、それを本人に切り出すわけにもいかない。
こんなSFチックな話、信じる人がはたしているだろうか。
私自身も信じられないくらいだし。
「もういいぜ、出るぞ」
ぎ、と音を立てて扉を上げると同時に差し込んだ光はとても眩しかった。
その光に思わず目を細めた。
そんな光景に有川くんはまた笑う。
そして手を差し伸べてくれる。
その手を取って疑問を口にした。
「あのさ、サボるならなんで私を誘ったの?」
他にもいるでしょ、春日さんとか。
そう言いながら立ち上がるとスカートの埃をはらう。
その間、彼は答えにくそうに唸っていた。
そんなに悩む事か?
(というか期待してしまった自分が恥ずかしいじゃないか。)
勇気を決めたのか顔を上げると苦笑いを浮かべて屋上の扉へと歩く。
そして有川くんはそのまま扉を開き、中へと入っていく。私もそれに続く。
フェンス側に行き、互いに無言同士だったがしばらくして有川くんが口を開いた。
「お前には話しておきたいと思って」
「話?」
何の話だろうか。
有川くんが空を見上げた。私もそれに続く。
「SFっぽい話だから信じられないかもしれない」
「うん」
「でも、嘘じゃない」
「うん」
頷くと彼はまた笑って口を開いた。
彼の秘密を紹介します
有川くんの漂流体験にはとても驚かされた。
三年も異世界にいて、刀を握っていたとか何とか。
どこのSF的な物語よりも魅力的だった。
まぁ、それより上を行くと言ったらその後の彼の告白ぐらいだと思う。