たばこふかして
あーあ、いつもどうり。
つまらない日常。
うんざいする。
「お前な」
背後から聞こえた声はすぐに誰のものか分かった。
兄のものだ。
今年、中三になる運動能力がいい自慢の兄。
「煙草。禁止って約束してたじゃねーか」
がシャン、と背後のフェンスが小さく音を立てた。
そういや母さんとそんな約束もしてたわ。
忘れてた。
ほら、人間素直に生きなきゃ駄目じゃん。
「それにしても・・・お前、何処座ってんだよ」
怪我人だからこそ座ってる。
屋上のフェンスの向こう側にお見舞いに来てた人が座ってたらそれこそ問題でしょ。
うちの親はこれしきりじゃ心配しないじゃない。
落ちたらどうすんの、って。
ここ、屋上なんだし。
そりゃ、死ぬっしょ。
「馬鹿と煙は高いトコが好きなのよ」
ぷは、と音を立てて口から灰色を吐き出して、心配性の兄に目をやる。
「兄貴はどうしたの?今日、部活は?」
骨折、と判断された足をブラツカセタ。
そのたびに兄貴が真っ青になる。
ああ、本当にからかいがいのある人だ。
「うちの部長の見舞いだよ」
「ん?」
「ほら、前に話しただろ?
テニス部の部長が入院したって」
あ、そういや聞いてたっけ。
そんな話。
今の今まで忘れてたけど。
「ついでにお前の様子も見ていこうと思ったらいないし」
「そしたら煙草吸ってるしー・・・」
「・・・中二って反抗期なの」
あんなスパルタな親に育てられたらぐれたくなるのよ。
兄貴が不良にならなかったのが不思議でなんない。
「そのスパルタで立海なんて有名付属中に入れたのは誰のおかげだ?」
指を刺されると正直、詰まる。
そりゃ、あの母親のおかげではあるわけだけども。
「悠。
ここにいたんだ。皆、帰っちゃったよ」
「幸村」
背後のやりとり。
「、こっちは俺の勤める部活の部長」
指を刺された人物を見ると少しびっくりした。
これが強豪と恐れられる立海大テニス部の部長!?
イメージ全然違うじゃん!!
「あ、もしかして悠の妹?」
「もしかしなくてもそう」
兄貴はにやりと笑ってその幸村って奴に返事を返す。
幸村、さんはゆっくりと歩いて兄貴の隣に立った。
「はじめまして、幸村精市です」
「・・・こんにちわ。です」
相手のあいさつのそっけなく答えるのはいつものこと。
そんで相手がその態度に怒るのもいつものこと。
けど、いつもと違うのは彼の、
相手の態度。
「ちゃん、か。
いい名前だね」
ふわり、と奴は笑った。
私はその手から煙草を落とした。
煙草の向こうには青い空が広がっていた。
たばこ色の空