退院おめでと。
今日が幸村部長が退院する日だけど。
この頃、部長の様子がおかしい。
前よりボーっとしてるし、ため息をついたりしている。
部長の後ろを歩きながら副部長や柳生先輩はすごく心配しているみたいだけど仁王先輩は笑って「心配ない」と言った。
その言葉にみんなが眉を顰めた。
「どういうことです?仁王くん」
「だから、別に病気とかそういうんじゃないんじゃって」
「まーある意味病だけどな」
仁王先輩と悠先輩はどうも幸村部長の様子について知っているみたいな口ぶりだ。
そんな和気藹々している二人に柳先輩は言う。
「どういうことだ?」
「さすがの達人でも分かんねーか」
「しかたなか。
うちの部はマネ一人っ子おらんのじゃから」
二人とも、ため息ついてどうしたんすか。
みんな、固まってますよ。
丸井先輩は気づいたのか微妙に頷いてるけど。
そして二人は幸村部長の背中を指差して声を上げた。
「「ずばり、あれは恋の病だ!(じゃ!)」」
「ちゃん」
いきなり声を出した部長はみんなの視線を集めた。
部長の前には一人の女がいた。
あぁ、もしかして。
コイツが。
幸村部長の想い人。
・・・あれ?
そういや、あれって・・・。
「悠先輩の妹の」
「赤也、クラスメートだろぃ?」
「でもアイツ、不良って噂が」
うちのクラスだけじゃない。
うちの学年全員が噂している。
は 不良だ。
と。
「噂は噂だよ」
にっこりと優先パイが笑うから。
あ、そうなのかも、と思ってしまう。
先輩らから目を離して二人に視線を向けた。
「あ、あの幸村さん。
今日。退院だって、聞いて・・・」
「うん」
「だからその。
・・おめでとうございます!!」
お辞儀するみてぇには部長に頭を下げた。
そして持っていた花を差し出した。
あぁ、コイツも部長の手術が成功したことに安心を覚えているんだ。
全てにありがとうって言いたいんだろうな。
そう思うとコイツ、も俺らと大差のない人間だということが分かった。
”噂は噂”
そのとおりだ。
部長はきっとのことを初めて”一人の女の子”として見た人間なんだろう。
部長は嬉しそうに笑っての差し出した花を受け取った。
「にしてもなんかじれったいのぉ」
「なんか小学生みてぇだな」
なんだか、二人の関係が分かった今、仁王先輩と悠先輩、
ついでに言えば丸井先輩までイライラしているようだった。
この二人はここから一押しがないと大変そうだ。
やれやれ、と俺の口からはため息がこぼれた。