夜中。



こっそりと家を抜け出す。



みんなが寝ていても不安になる。



足音を気にする。






物音を立てず家から出ると安心の息を吐く暇もなく、自転車に乗り継ぐと全力疾走でペダルを漕いだ。




時間を気にしながら丘を登りきると自転車を草むらに隠しこんで病院へと足を進めた。



彼の病室の窓まで来ると小さく窓をノックした。











「いらっしゃい。早かったね」











小さな窓から顔を出したのは幸村。


差し出された手を取り、窓枠に足をかけると力を入れ、病室へと忍び込む。



「今、何時?」





床に足が付くとキュッと小さな音を立てた。




「一時ジャストかな」

「丁度だね」





笑ってカバンから水筒を取り出すと幸村は小首を傾げた。




そして水筒を指差す。



「それは?」

「紅茶」





私が家でこっそり入れてきたものだ。



物音をあまり立てないように作業をするのは大変だった。

私の努力の結晶だ。




「幸村の手術が成功するように入れたの」




そうだ、彼は明日手術をする。







何ヵ月も前から幸村はに似た病気に侵されている。




成功する確立は極めて少ない。





明日、私は手術前に励ましてあげれるかわからない。





ここにくるかさえ怪しい。



明日、テニス部の試合だからだ。





私はテニス部のマネージャーだから試合に行かなければいけない。






今日の夜、無理にでも会いたかったのはそれが理由だった。







小さなカップは甘い香りをのせ、湯気を立てた。





甘さはもちろん幸村の好みの味だ。






「この紅茶を一時に飲むと願いが叶うらしいの。
だから幸村の手術が成功するおまじない」









ね、と笑うと幸村は嬉しそうに笑ってくれた。






「きっと、叶うよ」ありがとう、と彼の大きな手が私を撫でた。






姫君の入れた紅茶はそれは緩やかに。


幸村復活祭!の記念に書いた夢小説velです。
早く幸村のテニスが見たい!
待ちどうしい、そんな気持ちからこれを書きました。

紅茶のおまじないはまったく持って管理人が勝手に作ったおまじないです。
いやはや、ここまで読んでくださって本当にありがとうございました